輝いて見えた君の背中を羨ましいと思った。
何も出来ないで・・・いや、しないでいる自分とはあまりにも違った。



 「1」



 応援しなきゃいけないのに、何も言えなかった。
 それにも気づかないで、アイツは走っていった。

「頑張れ」
 と声をかけるだけでよかった。
 本当に、頑張ってもらわないといけないんだから。俺が何を考えていても応援することが常識だった。
 でも、できなかった。
 何も言えなかった。
 声をかけようとしていた相手のことを睨みつけるように見つめて、荒く息を吐くことしか今は出来なかった。
 いつだったか・・・忘れてしまったけど、悔しくないのか、と言われたこともあった。その時は何も言い返せなかったけど、今なら言える。
「悔しかった」
 声には出さずに一番中心に立っているアイツの背中を見る。





 小さい頃から一緒に遊んでいたやつが、急に遠くに行ってしまったような感じがした。

 いつも一緒にいたアイツが「1」を貰った。
 俺は、番号すら貰えなかった。記録係としてベンチに入った。

 ふたりで共に挑めれば・・・・・・と何度思ったか。
 今、そんなことを言っても意味は無いのに。
 黙々と練習を重ねるやつと、真面目に練習をしていても量も質も違うやつが一緒に出来るはずはないんだ。わかってたはずなのに。





 かみ締めていた唇を薄く開き、前を見つめる。
 サイレンが鳴り、試合が始まった。

 俺にもやれること、やるべきことがある。それを、今はやれればいい。

 今は、あいつに声をかけない。
 ・・・けど、この試合が終わった後に声をかけてみようと思った。
 それまでは精一杯応援してやるよ。声には出さないけどな。





 輝いて見える背中を羨ましいと思わなかったと言えば嘘になる。
 でも、憧れているだけではない。



「いつか、俺もあそこに立つんだ」












070811 (甲子園を見てて捏造・・・というか妄想)