電車の音がする。
 さっきまで何も感じなかった体に神経が少しずつ宿るように、凍っていた細胞が少しずつ溶けて動き出すように、音や感覚が戻ってきた。
 ・・・・・・温かい。
 今まで何も感じなかったのはなんでだろう。


 うたたね


 まるで深い水の中にいるようだった。
 冷たく暗いところで一人座っているような。


 意識が浮上する。引き上げられるような感覚。

「―――――ねぇ、」

 少し低くなった声。前はそんなに低くなかったのに、彼は少したって声が低くなっていた。
 ゆっくりと瞼を開けた。
 まわりが少し眩しい。そして、なんだか温かい。
 目の前の窓が日光をあますとこ無く通していた。光は少しオレンジがかっていた。
 目が光に慣れるまで真っ白な世界が広がる。少しずつ、ほんの少しずつ目の前が澄んで見えてきた。

「・・・ねぇ、ねぇってば」

 心地よい声が再び意識を深く沈めようとする。

「次の駅だよ」




「・・・うそだ」
「嘘じゃないよ。結構時間たってる」

 今さっき眠りについたような感じがする。そんなに寝ていただろうか。
 カタン カタン と音が聞こえた。
 ふと、横を見る。
 彼の肩に頭を預けていたことに気がついた。少しシワがよっていて、長い時間そのままにしていたということが分かった。

「うわ、ごめん。気づかなかった」

 彼は何に言ったのか少し分からなかったようで、

「ああ、うん。平気だから」

と言った。
 車内はほんのりと温かくて、少しずつだけれど、また眠気をつれてくる。
 くす。

「眠たそうだね」

 面白そうに笑う。そんなに面白いことじゃないと思うけれど。
 少なくとも、わたしは面白くない。

「まぁね」

 とぶっきらぼうに答えた。




 少しの沈黙。
 永遠のようにおもった。




「じゃあさ、」
「・・・なに?」

 目線を上げる。
 一瞬、交差する視線。
 彼はなぜだか嬉しそうに目を細めた。

「一緒に寝てようか。最後まで乗ってようよ」
「・・・・・・。どういう話から、こうなってる?」
「普通に今までの話から」
「そうだっけ」
「そうだよ。・・・だから、寄りかかってていいよ」

 なんでこんなに嬉しそうなんだろう。
 分からないけれど、いや、分からないからこそ惹かれるのかもしれない。

「じゃあ、そうする。でも、ちゃんと起こせよ」

 しぶしぶそう言うと、彼は笑った。

「わかった」




 また、肩に頭を預ける。
 このままでいい、と言う気持ちがあるからかもしれないけど、なんだか、さっきよりも温かく感じる。
 本当に寝ちゃいそう。

「おやすみ」
「ん」

 自分の頭にも重みがかかる。
 人の重さって、きっとこういう感じなんだろうな。

 ずっと、乗っていられたらいいのに。







070820

おまけ。
 「・・・本当に2人で寝てたんだ」
 「ごめん」
 「駅で起こしてって言ったよね」
 「うん」
 「どうやって帰るよ。もう出てないし」
 「歩いて帰るか!!」
 「・・・・・・・・・。何言ってんだか」