てがみ



 しばらくぶりに帰った家は、なんだか少しだけ寒く感じた。

 暖房を慌ててつけて、コタツにもぐりこむ。まだ冷たいままの毛布が体を更に冷やしていく。体は震えていて、手を何度こすっても温まらない。冷たい毛布を被っているから寒いんじゃないかと思ったが、ここを抜け出して別の部屋にいくのも結局は寒いままな気がしたから我慢する。
 やがて、ゆっくりと絨毯とコタツが温かくなり冷えた体にしみこんでいった。
 ふう と短く息を吐いて、やっと落ち着くことが出来た。

 明日が何の日かは予定表を見なくてもわかる。何度もくり返しくり返し確かめたから。ずっと来なければいいのにと思っていた。けれど、見るたびにやっと来たかという安堵感も一緒にやってきた。

 明日のために準備もしなきゃ、今だってもう寝たほうが良いし、明日だって早起きしなければならないんだ。早く良い感じに温まったコタツから抜け出して荷物をまとめなきゃ。
 でも、あと10分だけ。必ず準備をするから。
 自分に言い聞かせて、頬をテーブルにくっつけた。そこだけがいやに冷たくて、これなら寝ることもないだろうなと思った。

 目の前にある郵便物になぜか目がいった。溜まってた新聞や広告、親からの手紙。
 それから、きれいな萌黄色の便箋。
 誰から来たのかも分からないし、そんなものは時間があるときにまとめて見れば良い。なのに、僕はその便箋から目を離すことが出来ない。準備もしないと、と急かす自分をなだめて、それに手を伸ばす。

 それは、3年前までずっと、いっしょにいた人からだった。





080207