秋野涼太様
拝啓
お元気ですか?最近だいぶ寒くなってきたようなので、風邪を引いていたりはしませんか?
そっちに比べると、こっちはまだそんなに寒くないのですが、やはり冬だなと思うようになりました。近所を歩くたびに、色づいた葉がカサカサと音を立てて足元で舞っています。
あれから、大分経ってしまいました。別れたあとの電車の中でさっそく連絡しようとか、何かあったときに伝えようとか、何度か思っていました。ですが、僕らの周りの時間はあっと言う間に進んでいってしまって、気がつくと一日がたって一週間になって一年が過ぎてしまいました。遅くなってしまったことが残念です。
メールにしようと思ったのですが、買い換えた時に(水没させてしまいました)、連絡先をなくしてしまったのです。折角なので手紙を書くことにしました。
今日、あの約束の場所へ行きました。僕にとっては忘れられない、一生心に残るであろう場所です。
今日でちょうど最後に会ってから3年が経ちます。朝起きて、寝ぼけた頭で駅へ向かい、気がついたときには電車にゆられていました。そして、電車の中で3年たったことに気がついたのです。僕が無意識で向かったあの場所に、貴方はあれから行きましたか?
あの丘は、あの時とまったく変わらない景色を見せてくれました。やさしい景色に僕は恥ずかしい話ですが泣いてしまいました。時が止まったかのようにも感じられて、ずっとずっと泣きました。
貴方のことで思い出すのは、今となっては、二回目に会ったときのことばかりです。
話してくれたときの貴方の顔を今でも思い出します。見ている僕が締め付けられるような思いでした。創をえぐってしまったのではないか、あそこでその話へ持っていかなければ、とずっと後悔しています。
けれど、ああやって話を出来たことをとても嬉しく思っているのです。
約束を果たしてくれてありがとうございます。……書くというのも、結構照れくさいのですね。
これは帰りの電車の中で書いてます。乗客は乗っている車両には僕しかいないので、おおっぴらに書いてたりします。まわりはすっかり夕闇に包まれてしまっていて、朝からずっとあの丘にいたことに驚いています。何も言わずに家を飛び出してきたので、これから怒られるでしょう。そのことを考えると、このまま別のところに……と思いましたが、流石にそれはやめておくことにします。
今日の記憶、今日感じたことを忘れてしまわないうちに書いておこうと思いました。
無事に伝えられているでしょうか。
今読み返してみたら、何を言ってるのかいまいち分からなかったので、この手紙をおくるかどうかも怪しくなってきました。書き直しはしないつもりなので、この手紙が届いたら、どうか笑って読んでやってください。
本格的に寒くなってきます。これからも体調には気をつけてください。
それでは。