「あの青い屋根、友達の家だったんだ」
 と話し出した涼太の顔を、僕はちゃんと見れなかった。



 唄聴こえる町



 僕らは小さい頃に<この木の下でまた会おう>と約束をしていた。

 約束の時間を3分遅刻して着いたこの場所は、相変わらずきれいな若草と野花で埋め尽くされていた。遅い、と怒った顔をしていった涼太は以前会ったときと変わらない顔立ちだった。「ごめん」と謝るとすぐに「へいきだよ」と笑ってくれた。
 僕らがこうして会うのもまだ2回目だ。初めて会ったときに仲良くなり、この約束を取り付けたのだ。お互いに幼いなと思いつつも、この約束が忘れられることはなく、こうして話をしている。

「涼太は変わらないね」
「そっちこそ。瑞樹も変わってないよ」

 2年という時間は、僕らをあまり変えてはくれなかったようだ。
 僕は少し残念に思った。一目見ても互いにわからないという方が面白いなと思っていたから。



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