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そして5年がたって、約束の日になった。
一応交わした約束とは言え、最後にきちんとサヨナラも言えなかった相手が待っているとも、正直思えなかった。自分だけがこの日を楽しみにしてるんじゃないかという不安が段々と大きくなった。連絡先も知らない、名前が「涼太」という事しか知らない……。
それでも、今日こうして無事に再会できた。涼太は待っていた。
「どうした?」
こうしてまた話すことができた。
「なんでもない」
「ふーん? ヘンなの」
あの時言えなかった言葉を今、言わなきゃ。
「ありがとな」
「どーいたしまして。………なにが?」
「……なんでもない!」
「あー! お前ってそんなやつだったんだ。5年前はあーんなに純粋なオトコノコだったのになー」
「今もそうだろうが」
「いーや、違うね。もっとかわいかったもん」
「男にかわいいは無いだろ」
「まーいいじゃん。素直に受け取っとけよ。褒めてんだぞ」
「はいはい。ありがとうございます」
くだらない話をいろいろとした。僕がどこに住んでるのかから始まって、彼女はいるのか、…いねーの?信じられねー、うるせーなお前こそいないだろ、俺はいるもん、嘘だろ、そうだよ――。とかそんな感じの。
その中で聞いた話だと、涼太はもう引っ越してここには住んでいないらしい。
そのことに僕は驚かなかった。「もう少し驚けよな」と言われたけれど。彼にはここの空気は合いそうにないと、どこかで感じていたんだと思う。
「…どうした?」
涼太がずっと遠いところを見ている。
「……へ? いや、なにも」
嘘だな、と思った。もしかしたら声に出てたかもしれない。そんな目をしていて、何もないわけがないじゃないか。なにか寂しそうな感じというか…昔かなしいと思ったことを懐かしんでいる、みたいな。僕にはそれを表現する語彙力が足りない。
「………」
なんと言えばいいのかわからないで黙り込んでしまうと、それまでの空気があっと言う間に変わってしまったような気がした。それまでの、あんなに楽しかった空気が壊れてしまったような。そんな空気にしてしまった自分が嫌になる。
「……いやさ、俺、この町がきらいだったんだ」
照れくさそうに言う言葉は、僕の想像していたものよりも遥か彼方にあった。
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